競走馬の脚質の違い

競馬の基礎知識

脚質とは

競馬新聞の番組表を見ると「脚質」の欄があり、馬により「逃げ」「先行」「差し」「追い込み」の4種類の単語が並んでいます。競馬初心者にはどのような違いがあるのか分からないですよね。実は競走馬にはそれぞれ「戦法」と言える得意な脚質があり、有力馬の脚質で全体のレース展開や読みが変わってくるのでレースの勝ち負けを判断する重要なポイントになります。

そして脚質の違いでレースの進め方が異なり、それぞれ有利な点や不利な点が存在します。
今回は脚質について競馬初心者にも分かりやすいように詳しく説明します。

競馬の脚質は「逃げ」「先行」「差し」「追い込み」の4つ

競馬用語の脚質とは「レース中に馬がどこに位置取りしているか」を表しています。スポーツ用語でいえばポジショニングのことです。
集団の先頭から

  • 逃げ
  • 先行
  • 差し
  • 追い込み

の順番になります。

脚質は競馬場のコース形態で有利不利があり、またレースのペースや展開でも有利不利がります。そのため出走馬の力関係やコースをきっちりと検討して有利な脚質な馬を選ぶほど、馬券が取れる確率が高くるってこと。
ではそれぞれの脚質がどのような特徴とメリット、デメリットがあるか見ていきますね。

逃げ:スタートから終始先頭で走り、そのまま走り抜ける戦法

逃げ馬のポジショニング

「逃げ」とは、スタート直後から先頭に立ち、ゴールまで先頭のまま押し切るレースを得意とする競走馬の脚質です。他の馬から見れば逃走しているように見えるので、「逃げ」と呼びます。スタートダッシュが早く、圧倒的なスピードを持っている馬が逃げの脚質を選ぶことが多いです。

逃げのメリット

レースの主導権を握り自分のペースで競馬ができる

たいていの競走馬は自分が先頭で走っていると気分が良く、リラックスして走れます。またレース中に心身にストレスが掛からないとスタミナのロスも少なくなります。

最短距離を走れる

逃げ馬は他馬にポジションを邪魔されないので、内ラチの最短距離を走れます。
1周コースだと、内ラチから1m離れるごとに走行距離が約6.2m違ってきます(小学校で円周の求め方は習いましたよね)。6mは着差なら約2馬身、タイム差なら0.3-0.4秒の差!

0.1秒を争う競馬では走る距離が短いほど、勝てる確率が高くなるので、スピード勝負なら最短距離を走れる逃げ有利になります。

逃げのデメリット

標的になりやすい

逃げ馬はレース中に他の馬の標的にさらされます。競走馬は併走すると習慣的に抜かれないよう速度を上げますが、速度を上げると早く息切れして失速してしまいます。また併走で一度力負けしたと認めると、多くの馬が嫌気を起こし走るのを諦めます。

空気抵抗を受けスタミナロスしやすい

先頭を走るということは、それだけ空気抵抗を受けやすいということ。スピードスケートでも自転車競技でも、前を走る選手の真後ろに着けると空気抵抗を減らしてスタミナを温存します。そのため終始空気の抵抗を受ける逃げ馬は、後続馬に比べスタミナロスしやすいといます。

気性に問題のある馬が多い

逃げる馬は勝気すぎるか、或いは他馬を怖がる臆病な性格なため苦肉の策で逃げ脚質を選択する馬が少なからずいます。スピード能力が高い馬が逃げる場合は問題ありませんが、勝気な馬の場合はオーバーベース、臆病な馬は早めにプレッシャーを受けることでレース中に体力を消耗し直線で失速します。

先行:スピードを持続し押し切る戦法

先行馬のポジショニング

「先行」は逃げ馬の後ろにポジショニングして、レース中は2~3番手で走る競走馬の脚質です。ゴール前の直線で逃げ馬に並び、できればゴール手前で抜き去って後続の追撃を封じるのを得意の戦法とします。レース観戦では盛り上がりに欠けイマイチ強い勝ち方に見えませんが、実際に安定した成績を残す多くの競走馬は先行脚質です。

先行のメリット

先行で抜けだすジェンティルドンナ

スタミナのロスが少ない

逃げ馬の直後に位置取りするので、逃げ馬と同様に走行距離のロスを少なくて走れます。また芝のレースならまだ荒れていない場所を選んで通れ、道中のスタミナ切れを減らせます。さらに逃げ馬を風よけにしてレースを進められ、空気抵抗を受けず逃げ馬よりスタミナロスを減らせます。いわゆるスリップストリームです。

JRA総合研究所の検証でも前を走る馬の1馬身以内でレースを進めると空気抵抗が少なくなり、同じ能力の馬ならレースを75%進めたところで前の馬を交わした場合、理論上ゴール時点で3~4馬身差が出るとしています。

レース中の不利が少ない

レース中に自分の前にいる馬が少ないので進路妨害される可能性も僅か。最後の直線で前が塞がって加速できず不発といったリスクも少なくて済みます。

スピード能力を活かしやすい

先行馬は一定のスピードを持続させるのに秀でた馬が得意とする戦法です。また逃げ馬馬と違い従順な性格の馬が多く、騎手の指示も比較的よく従うので自身のスピード能力を活かしやすいといえます。

先行のデメリット

瞬発力に欠ける馬が多い

先行馬は持続するスピードがある一方で、多くの馬は最後の直線で瞬発力にイマイチ欠けます。レース展開で瞬発力勝負になると、後続の差し馬や追い込み馬にゴール前で交わされてしまいます。

差し:ゴール直線で瞬発力勝負に賭ける

差しはレースを馬群の5、6番手の中段以下でレースを進める馬の脚質です。闘争心が激しく瞬発力に秀でた馬は差しの戦法を選ぶ傾向にあります。レースで鮮やかな勝ち方を見せたり、ゴール前にハラハラさせたりしてくれるのもこの差し馬です。

差しのメリット

レース中に体力を温存できる

差し馬は前半あまりスピードを上げず、集団の中で待機しながら体力を温存します。闘争心が激しい馬の場合、レース中に前の馬を抜きたい衝動が抑えられています。最後での抑えられていた衝動が解放されると、直線で温存していた体力とともに物凄い加速力を生みます。

一度トップスピードになると、先行馬がそれに気づいてスパートかけてもエンジンが掛かりにタイムラグがある上に瞬発力も劣るので、一瞬で置いて行かれてしまいます。

ゴール板手前の競り合いに有利

ゴール前で競り合いになった場合も、前の馬を追い抜こうとする闘争心と一瞬の切れ味のある差し馬の方が有利に働きます。

差しのデメリット

走行距離のロスが大きい

最後の直線で差し馬は横の馬の不利を受けないようにレースを運ぼうとすると、どうしても集団の外側にポジションを取らなければなりません。外を回れば走行距離がそれだけ長くなり、時計もそれに従い遅くなり不利です。

ストレスを溜めやすい

差し馬はレース中に自分のペースで走れません。また前の馬を抜きたい気持ちを騎手が抑え込んでいるため、レース中にストレスをため込む馬も少なくありません。人間も同じですが、イライラすると体力を消耗します。

また感情のコントロールができない馬はストレスが原因でキレて途中で暴走したり、逆に途中でレースをやめたりしてしまうことも。差し馬で最後の直線で手ごたえは悪くなかったのに凡走するのは、これが原因。

追い込み:最後方からの豪快なごぼう抜きを演出

追い込みはレース中に最後尾にポジショニングし、直線で一気に先行する馬をごぼう抜きで交わし去って勝つ脚質です。追い込みが決まると非常に鮮やかなので、観客も拍手喝采です。

追い込みのメリット

馬にストレスがかからない

追い込みでは最後方にポジショニングするので周囲に馬がおらず、また逃げ馬の様にマークされることもありません。そのため、レース中に馬にプレッシャーが無くストレスがほとんど掛かりません。

スタミナを温存できる

追い込み馬は最後方にいるためある程度自分のペースでレースが運べ、スタミナを温存できます。

ある程度器用な馬であれば小回りコースの4コーナーを手前から進出しはじめ、差し馬が加速する前から先頭に並びかけ直線勝負を仕掛けられます。競馬用語でこれを「まくり」といいます。まくりは後方のポジショニングなので差し馬と同じ瞬発力勝負の馬と思われがちですが、この戦法でいつも勝ち負けできる馬はトップスピードを長時間持続できる脚質の馬です。

追い込みのデメリット

レース展開に左右されやすい

追い込み馬はレースの主導権を握れません。そのため直線を向いた時には先頭馬を捉えきれないほど離されていることがよくあります。また、あまりにもレース展開がスローだと前に行く馬もスタミナが温存され、やはり結果的に前の馬を交わし切れずに終わります。

距離ロスが大きい

基本的にゴール直線で前の馬を交わすために大外を回らざるを得ず、その分他の馬より長い距離を走らなければなりません。結果として前を捉えきれずに終わることが多くあります。

気性難や体質、距離に不安がある馬が多い

追い込み脚質を選択する馬の中には他馬を気にする臆病な気性や、コシが甘くスタートダッシュができない出遅れ癖、スタミナ不足など問題児も多くいるので見分ける必要があります。

勝率が極端に低い

最後方から大外を回って追い上げる追い込み馬は不確定要素が多く、全体の勝率も1割程度しかありません。よほど実力馬以外は軸として狙うのは難しいと戦法と言えます。

まとめ

競馬の脚質は「逃げ」「先行」「差し」「追い込み」でそれぞれメリットとデメリットがあり、競走馬の個性やコース形態、レースの展開によって使い分けられます。競走馬によっては複数の脚質を使い分けられるので必ずしも脚質が固定されるわけではありません。しかし馬券の購入では重要な要素なので、それぞれの特徴はぜひ覚えてください。

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