JRAには東京、中山、阪神、京都、中京、新潟、小倉、福島、札幌、函館の10か所の競馬場があります。それぞれの競馬場は個性があり、同じ距離でもコースの違いで有利な馬の脚質や走法などが大きく異なります。
競馬場によりコース形態が異なればレースの仕方も異なる
例えば東京で行われる安田記念と、京都で行われるマイルチャンピオンシップは共に1600mです。しかし東京が左回りでホームストレッチに坂があるのに対し、京都は右回りで平坦です。またホームストレッチの長さも東京が525.9mに対し京都は403.7mと120m近くも差があります。
東京のホームストレッチは長く登り坂なので、坂を登り切るきるために道中ある程度体力を温存させなければなりません。また直線が長いためお互い牽制し合い、なかなかラストスパートをかけません。自ずと瞬発力勝負になりがちです。
一方で京都は3コーナーから下り坂で、ラストスパートでスピードが出しやすい設定です。逃げ、先行馬はこの下り坂を利用し一気に加速するで仕掛けが早くなる傾向にあり、多少道中バテても惰性でゴールまで雪崩れ込めます。そのため先行して長くいい脚を使える馬が有利です。
このようにコースにより有利な戦法が異なるので、勝ち馬はそれを得意とする脚質の馬が多くなります。そのため、安田記念で圧勝したからといっても、同じメンバーでマイルチャンピオンシップを争ったらまた圧勝できる、などといった保証は一切ありません。
コースを知れば選ぶ馬も違ってくる
戦略の教科書『孫氏の兵法書』でも、地形別の戦略の違いについて多くの項目が割かれています。同様に各競馬場のコースの特色を知ることで選択すべき有力馬や穴馬も違ってきます。
JRAの各競馬場を大別すると、以下のように分類できます。
- 右回りと左回り
- 小回りと大回り
- ホームストレッチ(ゴール前直)が短い、長い
- ホームストレッチの坂の有無
- 野芝と洋芝
右回りと左回り
右回り | 中山、阪神、京都、小倉、福島、札幌、函館 |
左回り | 東京、中京、新潟 |
JRAの競馬場には右回りコースと左回りコースがあります。
馬も人間と同様に右利き、左利きあり、その数は人間と違い半々。ただし、ほとんどの馬は右回りと左回りを平均して走れます。しかし全体の1割ほど左右でどちらかに成績が偏る馬がいるので、勝馬選択の重要なファクターとなります。
小回りと大回り
小回り | 中山、小倉、福島、札幌、函館 |
大回り | 東京、阪神、京都、中京、新潟 |
JRAの競馬場は1周当たりの距離が短くコーナーがキツイ小回りコースと、1周当たりの距離が長くコーナーがゆったりした大回りのコースがあります。
小回りコースの特徴と有利な馬
小回りコースではコーナーが急です。コーナーを曲がる時にスピードを保ったまま侵入すると遠心力で外に膨らみコースロスします。そのためコーナーごとに馬は減速し、レースの時計が遅くなる傾向にあります。この減速で距離不安の馬でも道中息が入りやすく走り切れてしまいます。
小回りコースをロスなく回るには、一完歩の歩幅が短いピッチ走法の競走馬が有利です。また小回りコースはホームストレッチが短いので、逃げ・先行馬が有利です。さらにピッチ走法の追い込み馬なら、まくりが決まりやすくなります。
大回りコースの特徴と有利な馬
一方で大回りコースではコーナーがゆったりしており、小回りコースに比べればコーラリングに掛かる遠心力が弱いのでスピードを落とさずコーナーを回れます。そのためレース全体のペースが緩まず、息が入り難い展開になるため走り切るにはある程度スタミナが要求されます。
また大回りコースではホームストレッチが長く、エンジンの掛かりが遅い競走馬でも加速する猶予があり、差し、追い込み馬が有利です。また一完歩が大きなスライド走法の馬は、持続するスピードを十分に活かせるので有利です。
ホームストレッチが短い、長い
直線が短い | 中山、京都内回り、阪神内回り、小倉、新潟内回り、福島、札幌、函館 |
直線が長い | 東京、京都外回り、阪神外回り、中京、新潟外回り |
JRAの競馬場は直線が長いコースと短いコースがあります。
基本的にホームストレッチが短ければ逃げ・先行が、逆に長ければ差し追い込みが有利です。芝ならホームストレッチが一番短いのは函館の262m、一番長いのは新潟外回りの659m。その差は2.5倍、400m近くあります。これだけの差があればコースごとにレースの戦略が違うのも当然。
また京都と阪神、新潟は内回りコースと外回りコースがあり、内回りコースはホームストレッチが短く、外回りコースはホームストレッチが長くなります。開催により同じ距離でも使うコースが違うので注意が必要です。
ホームストレッチの上り坂の有無
直線上り坂 | 中山、東京、阪神、中京 |
直線平坦 | 京都、小倉、新潟、福島、札幌、函館 |
JRAの競馬場はアップダウンの激しいコースと、比較的平坦なコースがあります。1周回れば最終的に上りと下りの高低差は0mなので、道中はペース配分が勝敗のカギです。
しかし一番重要なのは、最後のホームストレッチの上り坂の有無です。
ホームストレッチに上り坂があると、道中に体力を消耗する馬にはプラスアルファのパワーや勝負根性が必要です。腰が甘い馬や勝負根性がない馬がホームストレッチに坂のあるコースで早めにスパートすると、坂を上り切った時点で体力を消耗して失速します。
特に中山は直線が310mしかなく、向こう正面からゴール手前50mのまで2.5mの急坂が待ってます。早めにスパートした馬は息切れを起こし、ゴール手前で後続馬に交わさるシーンが数多く見られます。
一方でフラットな平坦コースであれば、パワーがない馬や勝負根性がない馬でもスピードに乗ってしまえばそのまま押し切れます。
開幕週で芝の状態がいいと、ホームストレッチが長いコースでも前が止まらずに逃げ馬や先行馬がそのままなだれ込むレースが見られます。特に京都は4コーナーから下り坂なので加速がしやすく、ホームストレッチでスピードが出るコース形態です。
野芝と洋芝
洋芝 | 札幌、函館 |
野芝 | 東京、中山、阪神、京都、中京、小倉、福島、新潟 |
中央競馬の芝コースは野芝と洋芝が用いられています。洋芝と野芝は性質が異なり、最大の違いは地下茎の位置です。基本的に芝は地下茎を横に伸ばしながら繁殖します。この地下茎の違いで好走する馬の条件が異なります。
野芝コースはスピードのある馬が有利
野芝は地表を這うように地下茎を伸ばします。そのため地下茎が地表を覆います。いわば芝の絨毯です。しかも芝の地下茎は大変強く、馬の蹄では簡単には切れないし、下の土も掘れません。
そのため野芝では軽い力でもスピードが出せ、自ずとスピードのある馬が有利です。ただし野芝の表面は固くクッション性があまり良くないため競走馬の脚に負担が掛かり、しばしば故障につながります。
洋芝ではパワーのある馬が有利
一方で洋芝の地下茎は文字通り地下に根を張り横に伸びて繁殖します。そのため地表の芝の葉と葉の間に土がある状態です。馬が洋芝を走ると蹄で土も一緒に掘り起こされます。そのため洋芝ではパワーが必要で、スピードもあまり出ません。
ただし、洋芝は硬い地下茎との間にある土がクッションの役割を果たし、野芝に比べると馬の脚への負担が軽減します。
洋芝はとにかくパワーが要るため、野芝で活躍していたスピード馬が洋芝でコロッと負けることはしばしばあります。逆に洋芝が滅法強い馬もいます。日本で活躍した馬が、凱旋門賞で不甲斐ない結果になるのは、ヨーロッパの洋芝に対応しきれていないのが原因です。
洋芝は寒さに強く、冬でも芝を青く保てます。ただし暑さに弱いので洋芝コースは北海道の札幌競馬場と函館競馬場だけです。
冬場のオーバーシードについて
野芝は暑さに強いのですが、冬場は黄色く変色して見た目が悪化します。ただし芝自体は枯れていません。中央競馬の芝コースが冬でも青々なのは、オーバーシードと言って寒さに強く地下茎のない別品種の洋芝を野芝の間に撒いているからです。
このオーバーシードをしたからと言って、時計が遅くなることはありません。
まとめ
中央競馬10会場ではそれぞれコース形態が異なります。コース形態によって馬の脚質や走法に有利、不利が生じるので馬券購入の際にはその特徴をよく考慮し、よりコースに適した馬を選んでください。
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