競走馬の血統と距離適性

競馬の基礎知識

競馬は別名「ブラッド・スポーツ」。競走馬の血統と距離適性には統計上密接に関係性します。

新馬戦や未勝利戦、1勝クラスでは各競走馬の基礎能力に開きがあり、血統と距離適性の違いは見え難いのですが、クラスが上がるごとに距離のスペシャリストが密集するため特定の距離に特定の種牡馬を父にもつ競走馬が集中するのが分かります。

そのため競走馬の父を見れば、その馬の距離適性をある程度推測できます。

G1競走と種牡馬の関係

実際に各距離のスペシャリストが集まるG1レースをもとにどのような距離にどの種牡馬が馬券に絡みやすいのかを見てみましょう。

短距離戦はアドマイヤムーン産駒が強い

下記の図は2010~2019年までの10年間における高松宮記念とスプリンターズステークスで、馬券となる1着から3着まで入着した種牡馬だけを並べた表です。

年度 着順 高松宮記念 スプリンターズS
2019 1 Scat Daddy Revens Pass
2 アドマイヤムーン Speighstown
3 ジャングルポケット ロードカナロア
2018 1 アドマイヤムーン アドマイヤムーン
2 キングカメハメハ ショウナンカンプ
3 ダイワメジャー スウェプトオーヴァーボード
2017 1 アドマイヤムーン スウェプトオーヴァーボード
2 キングカメハメハ キングカメハメハ
3 スウェプトオーヴァーボード アドマイヤムーン
2016 1 サクラバクシンオー スウェプトオーヴァーボード
2 ディープインパクト ディープインパクト
3 Harlan’s Holiday ダイワメジャー
2015 1 Pris フジキセキ
2 アドマイヤムーン サクラプレジデント
3 ディープインパクト オンファイア
2014 1 ダイワメジャー アドマイヤコジーン
2 アドマイヤコジーン フジキセキ
3 フジキセキ ディープインパクト
2013 1 キングカメハメハ キングカメハメハ
2 ロージズインメイ アドマイヤムーン
3 アドマイヤムーン キングヘイロー
2012 1 クロフネ キングカメハメハ
2 シンボリクリスエス クロフネ
3 キングカメハメハ ロージズインメイ
2011 1 フジキセキ クロフネ
2 シンボリクリスエス スウェプトオーヴァーボード
3 マンハッタンカフェ ファルブラブ
2010 1 フジキセキ Encosta de Lago
2 チーフベアハート フジキセキ
3 Forest Wildcat シンボリクリスエス
順位 種牡馬 頭数 占有率
1 アドマイヤムーン 8 13.3%
2 キングカメハメハ 7 11.7%
3 フジキセキ 6 10.0%
4 スウェプトオーヴァーボード 5 8.3%
5 ディープインパクト 4 6.7%

短距離というとサクラバクシンオーのイメージですが、実際に1200mのG1でサクラバクシンオー産駒が馬券に絡んだのは1度だけです。サクラバクシンオー産駒のショウナンカンプ産駒を含めても2度しかありません。

実際に短距離戦のGIで一番馬券に絡んでいるのはアドマイヤムーン産駒で60頭中8頭、占有率は13.3%になります。その次がフジキセキの6頭で占有率は11.7%。その次にキングカメハメハが10%。以下スウェプトオーヴァーボード、ディープインパクトと続きます。

実際にアドマイヤムーンとディープインパクトでは2倍の差があり、アドマイヤムーン産駒の強さが際立ちます。アドマイヤムーンは現役時代に勝利したG1はドバイデューティーフリー(1800m)、宝塚記念、ジャパンカップと中距離が中心なので意外な結果に思えます。

しかしアドマイヤムーンの父は短距離馬を多く出したエンドスウィープで、同じく5頭が馬券に絡んでいるスウェプトオーヴァーボードの父も同じです。そのためアドマイヤムーン産駒はエンドスウィープの短距離適性の血が濃いと言えます。

アドマドヤムーン

エンドスウィープフォーティナイナーMr.Prospector
File
Broom DanceTom Rolfe
Continue
マイケイティーズサンデーサイレンスHale
Wishing Well
ケイティーズファーストKris
Katies

スウェプトオーヴァーボード

エンドスウィープ フォーティナイナー Mr.Prospector
File
Broom Dance Tom Rolfe
Continue
Sheer Ice Cutlass Damascus
Aphonia
Hey Dolly A. Ambehaving
Swift Deal

 

参考ですが、2015年のスプリンターズステークスで3着の種牡馬・オンファイアはディープインパクトの全弟で血統構成はディープインパクトと同じです。血だけで言えばディープインパクトはスウェプトオーヴァーボードと同等の短距離適性と言えます。

マイルG1はディープインパクト産駒が圧倒

JRAの芝のマイルG1は桜花賞、NHKマイルカップ、ヴィクトリアマイル、安田記念、マイルチャンピオンシップ、ジュベナイルフィリーズ、朝日杯フューチュリティステークスと全7レースあり、他の距離と比較して最多の番組が組まれています。

 

年度 着順 桜花賞 NHKマイル ヴィクトリアマイル 安田記念
2019 1 ディープインパクト ダイワメジャー ハービンジャー ステイゴールド
2 ダイワメジャー ロードカナロア ディープインパクト クロフネ
3 パゴ ハーツクライ ステイゴールド ロードカナロア
2018 1 ロードカナロア ディープインパクト ディープインパクト Frankel
2 オルフェーヴル ディープインパクト ハーツクライ クロフネ
3 ルーラーシップ キングカメハメハ ディープインパクト ハーツクライ
2017 1 ダイワメジャー クロフネ ステイゴールド ディープインパクト
2 ハーツクライ Speightstown メイショウサムソン ローエングリン
3 Frankel ダイワメジャー ディープインパクト スウェプトオーヴァーボード
2016 1 ヴィクトワールピサ ダイワメジャー フジキセキ ローエングリン
2 ディープインパクト マツリダゴッホ ディープインパクト スクリーンヒーロー
3 キングカメハメハ ステイゴールド ディープインパクト ディープインパクト
2015 1 キングカメハメハ クロフネ フジキセキ スクリーンヒーロー
2 ディープインパクト Harlan’s Holiday キングカメハメハ ディープインパクト
3 ディープインパクト キングカメハメハ スズカマンボ ダンスインザダーク
2014 1 ディープインパクト ディープインパクト ディープインパクト ハーツクライ
2 ステイゴールド ヨハネスブルグ スズカマンボ サクラバクシンオー
3 ハーツクライ チチカステナンゴ フジキセキ マンハッタンカフェ
2013 1 ディープインパクト スズカフェニックス ディープインパクト キングカメハメハ
2 ディープインパクト クロフネ クロフネ マンハッタンカフェ
3 ダイワメジャー ダイワメジャー テレグノシス ディープインパクト
2012 1 ディープインパクト ダイワメジャー クロフネ シンボリクエスエス
2 ディープインパクト シンボリクリスエス ディープインパクト サクラバクシンオー
3 ファルブラブ ダンスインザダーク ディープインパクト キングカメハメハ
2011 1 ディープインパクト サクラバクシンオー キングカメハメハ ディープインパクト
2 クロフネ ディープインパクト スペシャルウィーク シンボリクエスエス
3 マンハッタンカフェ ディープインパクト キングカメハメハ タニノギムレット
2010 1 キングカメハメハ フジキセキ スペシャルウィーク エアジハード
2 パゴ マンハッタンカフェ アグネスタキオン ロドリゴデトリアーノ
3 キングカメハメハ アグネスタキオン タニノギムレット タニノギムレット
年度 着順 マイルC ジュベナイルF 朝日フューチュリティ
2019 1 ステイゴールド ダイワメジャー ハーツクライ
2 ディープインパクト キズナ タートルボウル
3 ハービンジャー ハーツクライ ルーラーシップ
2018 1 ロードカナロア ディープインパクト ダイワメジャー
2 ハービンジャー パゴ スクリーンヒーロー
3 ディープインパクト クロフネ ディープインパクト
2017 1 ハービンジャー オルフェーヴル ディープインパクト
2 キングカメハメハ ルーラーシップ ロードカナロア
3 ディープインパクト ディープインパクト Raven’s Pass
2016 1 ディープインパクト Frankel ディープインパクト
2 フジキセキ ハーツクライ キンシャサノキセキ
3 ネオユニヴァース ダイワメジャー ダイワメジャー
2015 1 スクリーンヒーロー ダイワメジャー キングカメハメハ
2 ディープインパクト ステイゴールド キングカメハメハ
3 フジキセキ ディープインパクト ジャングルポケット
2014 1 ディープインパクト ディープインパクト ディープインパクト
2 ディープインパクト キングカメハメハ マツリダゴッホ
3 アグネスタキオン ステイゴールド クロフネ
2013 1 ディープインパクト ステイゴールド ヘニーヒューズ
2 ダイワメジャー ディープインパクト ショウカンカンプ
3 ディープインパクト ネオユニヴァース スペシャルウィーク
2012 1 フジキセキ ウォーエンブレム ローエングリン
2 サクラバクシンオー クロフネ キングカメハメハ
3 ディープインパクト ハーツクライ ローエングリン
2011 1 Giant’s Causeway ディープインパクト シンボリクエスエス
2 キングカメハメハ ファルブラブ ゼンノエルシド
3 Sahm アグネスタキオン アドマイヤムーン
2010 1 Forest Wildcat アグネスタキオン サクラバクシンオー
2 ダンスインザダーク クロフネ ディープインパクト
3 ネオユニヴァース ソングオブウィンド ディープインパクト

 

順位 種牡馬 頭数 占有率
1 ディープインパクト 52 24.8%
2 キングカメハメハ 17 8.1%
3 ダイワメジャー 14 6.7%
4 クロフネ 12 5.7%
5 ハーツクライ 10 4.8%
6 フジキセキ 7 3.3%
7 ロードカナロア 5 2.4%
7 アグネスタキオン 5 2.4%

 

馬券に絡んだ全210頭中、ディープインパクト産駒は実に50頭、占有率は実に24.8%、全体のほぼ1/4にも上ります。その次がキングカメハメハの17頭で入着率は8.1%、3位がダイワメジャーの14頭で6.7%、5位がクロフネで5.7%と続きます。

また初産駒が出走してから3年しか経っていないロードカナロアが占有率2.4%を獲得。もし同じ年数だけ産駒が走っていたらキングカメハメハとほぼ同じ位の成績が挙げられると想定できます。そのロードカナロアはキングカメハメハの直仔です。

ちなみに1位のディープインパクトは現役時代2000m以下のレースを走っていません。しかしディープインパクトは2位でNHKマイル優勝のキングカメハメハに比べてもトリプルスコアの差を付けています。マイル戦でディープインパクト産駒が出走したら注目です。

さらに短距離で1位のアドマイヤムーン産駒の占有率が13.3%なのを考えると、ディープインパクト産駒のマイルにおける成績が如何に特出しているかが分かるでしょう。

距離戦5位のディープインパクトが1位に躍進する一方、逆に1位だったアドマイヤムーン産駒はマイル戦では1頭も馬券に絡んでいません。これからもアドマイヤムーンの血が短距離戦向きの血統なのが分かります。

また短距離戦では顔を見せなかったダイワメジャー産駒が3位、14頭も絡んでいます。一方で後述する2000mではダイワメジャー産駒は1頭も馬券に絡んでいません。これもダイワメジャーが如何にマイル適性の高い血統かが分かると思います。

2000mの中距離ではディープインパクト、キングカメハメハが良績

2000mのG1は大阪杯、皐月賞、秋華賞、天皇賞・秋、ホープフスステークスの5レースが組まれています。大阪杯とホープフルステークスは2017年にG1に昇格したので、この両レースの集計は2017年から行います。

 

年度 着順 皐月賞 秋華賞 天皇賞・秋 ホープフルS 大阪杯
2019 1 ロードカナロア パゴ ロードカナロア ディープインパクト ディープインパクト
2 ジャスタウェイ ディープインパクト ディープインパクト ドリームジャーニー ルーラシップ
3 ディープインパクト ダイワメジャー クロフネ ハーツクライ ディープインパクト
2018 1 オルフェーヴル ロードカナロア キングカメハメハ ロードカナロア ハーツクライ
2 ルーラーシップ ディープインパクト ディープインパクト ジャスタウェイ ハービンジャー
3 スクリーンヒーロー ディープインパクト ルーラーシップ ハービンジャー ディープインパクト
2017 1 ディープインパクト ハービンジャー ブラックタイド ハーツクライ ブラックタイド
2 ハービンジャー ハーツクライ Marju Kitten’s Joy ディープインパクト
3 ルーラーシップ ハービンジャー ステイゴールド ステイゴールド キングカメハメハ
2016 1 ディープインパクト ディープインパクト スクリーンヒーロー    
2 ディープインパクト ヴィクトワールピサ ディープインパクト
3 ディープインパクト エンパイヤメーカー ディープインパクト
2015 1 キングカメハメハ ディープインパクト キングカメハメハ
2 ディープインパクト マンハッタンカフェ ディープインパクト
3 ブラックタイド キングカメハメハ フジイセキ
2014 1 フジキセキ ディープインパクト ディープインパクト
2 キングカメハメハ ハーツクライ ディープインパクト
3 スペシャルウィーク キングカメハメハ フジイセキ
2013 1 ローエングリン スズカマンボ ハーツクライ
2 シンボリクリスエス ディープインパクト ディープインパクト
3 キングカメハメハ ブライアンズタイム キングズベスト
2012 1 ステイゴールド ディープインパクト キングズベスト
2 ディープインパクト ディープインパクト ステイゴールド
3 ディープインパクト キングカメハメハ キングカメハメハ
2011 1 ステイゴールド ジャングルポケット ジャングルポケット
2 フジキセキ ハーツクライ ダンスインザダーク
3 ディープインパクト クロフネ ゼンノロブロイ
2010 1 ネオユニヴァース キングカメハメハ スペシャルウィーク
2 マンハッタンカフェ ゼンノロブロイ ゼンノロブロイ
3 キングズベスト ジャングルポケット グラスワンダー

 

順位 種牡馬 頭数 占有率
1 ディープインパクト 31 28.7%
2 キングカメハメハ 11 10.2%
3 ハーツクライ 7 6.5%
4 ステイゴールド 5 4.6%
5 ハービンジャー 5 4.6%
6 ロードカナロア 4 3.7%
7 ブラックタイド 3 2.8%
7 ルーラーシップ 3 2.8%
7 ジャンブルポケット 3 2.8%

 

2000mではマイルで1位、2位だったディープインパクト産駒とキングカメハメハ産駒が同じ順位で、共に占有率を上げています。またマイル戦では上位に名前の無かったステイゴールドとハービンジャーが顔をします。

7位タイのブラックタイドは1位のディープインパクトの全兄で、血統背景はディープインパクトと全て一緒です。また6位のロードカナロアと7位タイのルーラーシップはキングカメハメハの直仔です。ディープインパクトとキングカメハメハの血が如何に2000m向きが分かると思います。

2400mの中長距離はディープ、キンカメ、ハーツの三つ巴

2400mの距離で行われるオークス、ダービー、ジャパンカップはJRA全レースの中でも最も格が高いとされています。競馬ファンであればぜひ馬券を当てたいレースでしょう。

年度 着順 オークス ダービー ジャパンカップ
2019 1 ディープインパクト ディープインパクト ハーツクライ
2 ディープインパクト ディープインパクト ディープインパクト
3 パゴ ジャスタウェイ ディープインパクト
2018 1 ロードカナロア ディープインパクト ロードカナロア
2 ルーラーシップ オルフェーヴル ルーラーシップ
3 オルフェーヴル キングカメハメハ ハーツクライ
2017 1 Frankel キングカメハメハ ハーツクライ
2 ハービンジャー ハーツクライ キングカメハメハ
3 ハーツクライ ディープインパクト ブラックタイド
2016 1 ディープインパクト ディープインパクト ブラックタイド
2 キングカメハメハ ディープインパクト ネオユニヴァース
3 ディープインパクト ディープインパクト ハーツクライ
2015 1 ディープインパクト キングカメハメハ ディープインパクト
2 マンハッタンカフェ ディープインパクト ディープインパクト
3 ディープインパクト Marju キングカメハメハ
2014 1 ハーツクライ ハーツクライ シンンボリクリスエス
2 ディープインパクト フジキセキ ハーツクライ
3 ゼンノロブロイ ブラックタイド ディープインパクト
2013 1 スズカマンボ ディープインパクト ディープインパクト
2 ディープインパクト シンボリクリスエス ディープインパクト
3 ディープインパクト Big Brown ジャングルポケット
2012 1 ディープインパクト ディープインパクト ディープインパクト
2 ディープインパクト ステイゴールド ステイゴールド
3 ステイゴールド ディープインパクト キングカメハメハ
2011 1 デュランダル ステイゴールド スペシャルウィーク
2 Monsun ハーツクライ ジャングルポケット
3 クロフネ キングカメハメハ ジャングルポケット
2010 1 キングカメハメハ キングズベスト キングカメハメハ
2 ゼンノロブロイ キングカメハメハ スペシャルウィーク
3 ゼンノロブロイ ネオユニヴァース ネオユニヴァース

 

順位 種牡馬 頭数 占有率
1 ディープインパクト 30 33.3%
2 キングカメハメハ 11 12.2%
3 ハーツクライ 10 11.1%
4 ステイゴールド 4 4.4%
5 ブラックタイド 3 3.3%
6 ゼンノロブロイ 3 3.3%

 

2400mの中長距離ではディープインパクト、キングカメハメハ、ハーツクライが共に占有率10%超えで三つ巴の争いで、この3頭の産駒だけで全体の5割以上を占めます。

ディープインパクトとキングカメハメハは共にダービー優勝馬です。またハーツクライはレコード決着だったキングカメハメハのダービーで2着。2500mの有馬記念でディープインパクトに土を付け、2410mのドバイシーマクラシックで優勝しています。

1位のディープインパクトは驚異の33%超えで、全体の1/3。5位のブラックタイドがディープインパクトの全兄なので、これを計算に入れると36.7%にまで跳ね上がります。ディープインパクトの血が2400mに如何に強いかが分かるでしょう。

長距離戦ではディープ、ハーツクライ、ステイゴールドの三つ巴

3000mを超える長距離戦のG1は菊花賞と天皇賞春の2レースが組まれています。もっともJRAの全レース中3000m超のレースは他に万葉S、ダイヤモンドS、阪神大賞典、ステイヤーSの全6レースしかありません。

年度 着順 菊花賞 天皇賞・春
2019 1 ディープインパクト ディープインパクト
2 ディープインパクト ディープインパクト
3 ジャスタウェイ ステイゴールド
2018 1 ディープインパクト ステイゴールド
2 ステイゴールド ハーツクライ
3 キングカメハメハ ディープスカイ
2017 1 ルーラーシップ ブラックタイド
2 ディープスカイ ハーツクライ
3 ディープインパクト ディープインパクト
2016 1 ディープインパクト ブラックタイド
2 ステイゴールド ハーツクライ
3 キングカメハメハ ハーツクライ
2015 1 ブラックタイド ステイゴールド
2 ディープインパクト ハーツクライ
3 ゼンノロブロイ ハーツクライ
2014 1 スペシャルウィーク ステイゴールド
2 ネオユニヴァース ハーツクライ
3 スクリーンヒーロー マーベラスサンデー
2013 1 シンボリクリスエス ステイゴールド
2 ディープインパクト ディープインパクト
3 Authorized Cadeaux Genereux
2012 1 ステイゴールド ミスキャスト
2 ブライアンズタイム ジャングルポケット
3 トーセンダンス ハーツクライ
2011 1 ステイゴールド マンハッタンカフェ
2 ハーツクライ キングズベスト
3 ディープインパクト ヤマニンセラフィム
2010 1 パゴ ジャングルポケット
2 ディープインパクト チーフベアハート
3 ミスキャスト マンハッタンカフェ

 

順位 種牡馬 頭数 占有率
1 ディープインパクト 13 21.7%
2 ハーツクライ 9 15.0%
2 ステイゴールド 9 15.0%
4 ブラックタイド 3 5.0%

 

長距離戦でもディープインパクト産駒が全体の21.7%を占め1位。2位は同率でハーツクライとステイゴールドの15%。ディープインパクト産駒に肉薄し、3頭で全体の50%以上を占めます。

もっともディープインパクトの全兄である4位のブラックタイドの含めると、ディープインパクトの血統の占有率は26.7%まで跳ね上がります。ただし2400m以下に比べると長距離では信頼性に欠けます。

2400mで3、4位だったハーツクライとステイゴールドは共に順位と占有率を上げているので、この2頭の産駒は走破距離が伸びれば伸びるほど有利になる血統と推測できます。

一方でどの距離でも2位だったキングカメハメハは長距離戦では圏外。2頭が3着に絡んだだけなので、この距離は相対的に苦手と判断できます。

距離適性と血統、体格は相互関係性がある

体格と走法は密接な関係があり、また走法は適正距離に関係します。体格を決める骨格は遺伝的な要因が強いので、必然的に特定の血統を持つ馬が特定の距離に集まるのは当然と言えるでしょう。

ただし父が短距離を多く出す馬だからと言って、全ての産駒が短距離を走るということはありません。最近の研究では産駒の遺伝的な影響力は牡馬からが45~45%、牝馬からが55~60%と言われているので、むしろ母親が現役時代に走った距離に注目するのも重要です。

ダイワメジャーがマイル向き、ハーツクライが中・長距離向きの理由

ダイワメジャーもハーツクライもサンデーサイレンスの直仔です。しかしダイワメジャー産駒はマイルに良績が集中し、ハーツクライ産駒は距離が延びるほど馬券に絡む確率が高くなります。その違いは母系に流れる血と関係があります。

ダイワメジャーは母系のノーザンテーストの血が強い

サンデーサイレンス Hao Hail to Reason
Comah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
スカーレットブーケ ノーザンテースト Northern Dancer
Lady Victoria
スカーレットインク Crimson Satan
Consentid

 

ダイワメジャーもディープインパクトも共にサンデーサイレンスの直仔ですが、ディープインパクトが幅広い距離で活躍するのに対し、ダイワメジャーはマイル戦に集中しています。これはダイワメジャーの母系にあるノーザンテーストの血が影響しています。

ノーザンテーストはサンデーサイレンスが塗り替える前に長くリーディングサイアーを維持した種牡馬です。現役時代の競争成績は20戦5勝。ノーザンテースト唯一のG1勝利はフォレ賞の1400mです。他に勝ったレースも1300~1500mです。

ノーザンテースト自体は小柄ですが非常に筋肉が発達し、多くの産駒にこの筋肉質の体型を遺伝しています。現役時代のダイワメジャーも他のサンデーサイレンス系の競走馬に比べても首が太く筋骨隆々とした体形をしています。

馬の筋肉は骨格で量が左右されます。筋肉の量が多いと関節の可動域が限定され、走法も短距離向きのピッチ走法になります。ピッチ走法はダッシュ力や切れ味に秀で、マイル前後で進化を発揮します。一方、スタミナロスも大きく、長距離戦では不利です。

ハーツクライは母系のトニービンの血が強い

サンデーサイレンス Hao Hail to Reason
Comah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
アイリッシュダンス トニービン カンパラ
Severn Bridge
ビューパーダンス Lyphard
My Bupers

 

一方、同じサンデーサイレンスの直仔で母系の母の母にノーザンダンサー系のリファード血を持つハーツクライ産駒は中長距離の活躍馬を多く出します。ハーツクライの母系はダイワメジャーとは異なり母の父にグレイソブリン系の大種牡馬トニービンを持っています。

トニービンはダービー馬ジャングルポケットやウィニングチケットの父として知られ、産駒が勝ったG1のほとんどが東京競馬場に集中しています。ホームストレッチが長い東京コースはスライド走法が有利で、良質なハーツクライ産駒のほとんどがやはりスライド走法です。

飛び幅が大きなスライド走法は走行中のスタミナロスを減らし、スピードを持続させる特徴があります。そのためスタミナを問われる長距離ほど有利です。一方でダッシュ力や切れ味に劣り、短距離やマイル戦では不利に働きます。実際にハーツクライ産駒の短距離馬はほぼ見ません。

スライド走法の馬はスラっとした体格の馬が多く、事実ジャンブルポケットやウィニングチケットも体つきは幅が薄くスラッとしています。またハーツクライ自身も同期のキングカメハメハに比べスラっとした体格です。

つまりハーツクライはトニービンの血の特性を伝えやすい種牡馬と言えます。トニービンは2400mの凱旋門賞を、母の母の父に同じく凱旋門賞やキングジョージを制した名馬ダンシングブレーヴを輩出したリファールがいるので、底力やスタミナを裏付けています。

ディープインパクトが幅広い距離で活躍馬を出す理由

サンデーサイレンス Hao Hail to Reason
Comah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
ウインドインハーヘア Alzao Lyhard
Lady Rebecca
Burghclere Busted
Highclere

 

ディープインパクトは現役時代スライドが大きく、かつ脚の回転が速いというスライド走法とピッチ走法を併せ持つ特異な走り方をしていました。これを可能にするのは関節の変え可動域を広げる柔らかい筋肉で、父のサンデーサイレンスも柔らかい筋肉をしています。

ディープインパクト産駒がマイルから長距離まで活躍馬を出せるのは、自身と同じように筋肉が柔らかく、長距離で有利な大きなスライドと、同時に切れ味に繋がるピッチが速い走法をよく伝えるからです。もちろん走破距離は母系や各馬の性格に依存します。

一方でディープインパクト産駒に短距離の活躍馬が少ないのは、ダッシュ力に優れた純粋なピッチ走法には特化していないためです。

キングカメハメハの血が長距離戦に不利な理由

Kingmambo Mr.Prospecter Raise a Native
Gold Digger
Miesque Nureyev
Pasadoble
マンファス ラストタイクーン トライマイベスト
Mill Princess
Piot Birad Blakeney
The Dancer

 

キングカメハメハは現役時代大きなスライドでハイスピードのラップを刻める能力を武器にNHKマイルを1分32秒5のレースレコードタイで、2400mのダービーを当時のレコードタイムを2秒も更新する2分23秒3のレコードで優勝しています。
(このダービーレコードは翌年にディープインパクトが同タイムで記録します。)

またキングカメハメハは新馬戦当時から500kg近い雄大な馬格をしており、また非常に筋肉質です。キングカメハメハ産駒の多くが、キングカメハメハと同様に筋肉質の馬体をしています。

父はアメリカの主流血統であるミスタープロスペクター系のキングマンボ。キングマンボはジャパンカップ優勝、凱旋門賞で当時欧州最強馬のモンジューに半馬身差鼻差2着だったエルコンドルパサーを輩出しているので、2400mまでの距離の裏付けはできます。

キングカメハメハはスライド走法ですが、スピード自体は雄大な馬格から繰り出すパワーが源泉です。そのためキングカメハメハ産駒も多くがスライド走法ですが筋肉のパワーに依存した走りなのでエネルギー消費が大きく、2400mを超える距離ではガス欠を起こすと考えられます。

その証拠に一般にスライド走法の馬は重馬場を苦にしますが、パワーがあるキングカメハメハの仔はあまり苦にしません。またハイペースなど極端なレースで、筋肉のパワーに依存した爆発的な底力を発揮します。

ただし1回のレースで消費するエネルギーがあまりに大きいため疲労回復に時間がかかり、コンスタントにレースに使えな欠点も持っています。また驚異的なレースをした後は疲労が原因で長く不調が続いたり、或いは故障を発生したりするタイプが多いのが特徴です。

まとめ

以上のように距離別に特定の種牡馬が集中し、クラスが上がるほどその傾向が強まります。競走馬の体格は遺伝的な要素が強く反映し、体格は走法に影響します。そのため種牡馬を見れば各馬の距離適性をある程度判断でき、勝つ確率が高い馬を見抜けます。

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