社台グループとは、日本競馬界最大の競走馬生産牧場集団です。現在に至るまでG1をはじめとした主要な重賞レースの勝ち馬の多くが社台グループの生産馬です。
実際に2018年現在、出走馬の20%以上を社台グループの生産馬が占め、獲得賞金は実に1/3に上ります。G1レースに限れば半分以上が社台グループの生産馬です。つまり、賞金が大きいレースほど社台グループの生産馬が活躍します。
今の日本競馬界は巨大な社台グループとその他大勢の中小規模生産業者で成り立っていると言っても過言ではありません。そのため日本競馬界は社台グループの影響力が非常に強い構造になっています。
社台グループの特徴
では、社台グループとはどのような組織なのか簡単に解説します。
自前でスタリオンを持っている
社台グループの最大の特徴は、種牡馬を他の牧場の肌馬(繁殖牝馬)に供与して利益を上げる「スタリオン」を自前で持っている生産牧場です。もちろん自前の肌馬も多数所有しています。
他の零細の生産牧場で自前の種牡馬を所有しているところは皆無に等しく、その多くが社台スタリオンかアロースタッド、レックススタッド、日本系種牡馬協会などの種牡馬を利用します。またこれら他のスタリオンの種牡馬も、多くは社台スタリオンの払い下げです。
つまり質・量ともに社台スタリオンが圧倒しています。
社台グループの利益の仕組み
社台グループは潤沢な資金で国内外のG1勝馬や良血の種牡馬を購入し、それを自前の生産牧場や他の生産牧場の肌馬(牝馬)に種付けして利益を上げます。実際に国内G1を勝った良血の種牡馬はほぼ社台グループの独占状態です。
自社で生産した子供はセールと呼ばれる競り市や庭先取引で有力馬主に販売されます。自前のスタリオンで自前の肌馬に種付けすれば、高額な種付料も実質タダ同然。そのため他の零細生産牧場に比べ高い利益率を誇ります。
そしてその子供たちから牡馬からG1馬が出れば再度馬主から買取り、種牡馬として自社の肌馬に種付けしてその子供を販売します。知名度の高い国内のG1を勝った種牡馬の子供ならセールで高く売れ再び利益が上がり資金が増える・・・、という好循環で勢力を拡大しています。
八大競争やジャパンカップでは社台グループの本気度が違う
八大競争とは競馬界古くから格が高いと言われるG1で、3歳の桜花賞、皐月賞、オークス、ダービー、菊花賞、古馬の春・秋の天皇賞、そして有馬記念です。
またJRAは国際レース指定のジャパンカップを国内最高峰レースに位置付けています。さらに春競馬最後にファン投票で出走が決まる宝塚記念も注目度が高いレースです。当然これらのG1に勝った牡馬は種牡馬としての価値が高まります。
これらのG1の勝つことは馬主にとって大変名誉なこととされ、特に「ダービー馬のオーナーになることは一国の宰相になるより難しい」と言われています。
そのため社台グループでは八大競争やジャパンカップに多数の生産馬を出走させます。これらのG1は「社台の運動会」と呼ばれるほど社台グループ関連の馬が多数出走し、実際の優勝馬の数も社台グループ系の馬が圧倒的に多いのが現実です。
G1優勝馬のオーナーになりたい馬主たちの社台グループに対する注目度も当然高まります。金持ちの馬主たちが社台グループの生産馬を購入したいと考えるのは至極当然でしょう。
良血G1勝馬なら種牡馬として購入
またG1レースに勝った他の生産牧場の牡馬でも、良血や人気なら資金力にものを言わせて馬主から買い取り、社台スタリオンで種牡馬にします。当然その知名度を求め他の多くの生産牧場から良質の肌馬や集まり、その子供も注目されるのでセリでも高値で取引されます。
菊花賞・天皇賞春・秋・大阪杯・宝塚記念・ジャパンカップ・有馬記念とG1通算7勝を挙げたキタサンブラックもヤナガワ牧場生産馬ですが、13億5000万円のシンジケートが組まれ社台スタリオンで種牡馬になっています。
競馬は「ブラッド・スポーツ」なので、能力の高い馬が生まれる確率は良血ほど高くなります。新馬戦や賞金の高い重賞の人気馬のほとんどが社台グループ関連の馬なのも珍しくありません。
社台グループの影響力は絶大
実際、社台グループの生産馬からG1馬や重量勝馬が多数輩出されるため競馬界での影響力も絶大です。社台グループの意向に逆らえば厩舎は有力馬を預けてもらえず、騎手も能力が高い社台グループの生産馬に騎乗できません。馬の質が悪ければ自ずと成績も悪くなります。
番組表から社台系の馬を見分ける方法
JRAに登録されている社台系の競走馬は全体の20%にもかかわらず、獲得賞金は1/3もあることからも、社台系の競走馬を選べばそれだけ高い確率で勝ち馬券がゲットできます。番組表から社台グループの馬を見分けるには「生産者(生産牧場)」と「馬主」欄を見れば区別できます。
生産者
社台グループの生産牧場は「社台牧場」が前身で、規模の拡大と共に一族で分社化しています。
- 社台ファーム
- ノーザンファーム
- 追分ファーム
- 白老ファーム
馬主
「馬主」の欄では一口馬主のオーナーズクラブの名で区別します。
直系
- 社台レーシング :社台ファームの生産馬が中心
- サンデーレーシング :ノーザンファームの生産馬が中心
- キャロットクラブ :ノーザンファームと業務提携
- G1レーシングクラブ :追分ファームや追分ファーム生産馬が中心
傘下
- シルクレーシング :ノーザンファームの傘下
その他
- グリーンファーム :縁故で社台系の馬が供与されるが質は良くないという噂
これらの名前が「馬主欄」にあれば出走馬が社台グループの馬だと判断できます。
また他のオーナーズクラブも社台グループの生産馬だたお一口馬主の人気が高まるのでセールで購入して走らせています。他のオーナーズクラブや個人馬主の所有馬は、競馬新聞の馬柱にある「生産者」欄で社台グループ関連の馬か確認します。
他にも個人馬主として社台一族の吉田照哉氏、吉田勝己氏、吉田和美氏、吉田晴哉氏などの名が挙げられますが、最近のG1では殆ど絡みません。馬を売るという営業面で考えれば、自社の生産馬を購入する馬主に勝ってもらったリピータになってグループの利益につながります。
個人馬主の所有馬も、G1に勝つような有力馬は社台グループ関連がほとんどです。資金力がある有力馬主ほど社台グループには良いお客様です。これらの有力個人馬主には、セリを通さない庭先取引などで将来性の高い馬が優先的に回されることもあります。
G1では社台系のノーザンファーム生産馬が圧倒的に強い
2018年度で見た場合、障害を含めJRAのG1は26レース。そのうち社台系生産牧場は16勝し、ノーザンファーム生産馬に限ればなんと13勝。つまりG1勝利の半数がノーザンファーム生産馬です。馬主で見ると、社台系オーナーズクラブが12勝しています。
以下の表は2018年度の生産牧場と馬主のリーディングです。太字が社台系。この表からも社台系が上位を占め、さらにG1などを含め重賞ではノーザンファーム生産馬が勝利数、勝率から見ても他を引き離し圧倒的に強いことが分かります。
2018年度生産牧場リーディング
順位 | 生産牧場 | 獲得賞金 | 重賞勝利数 | 総勝利数 | 勝率 | 出走頭数 | 出走数 | 勝利頭数 | ||
G1 | G2 | G3 | ||||||||
1 | ノーザンファーム | ¥16,211,501,000 | 13 | 14 | 14 | 662 | 13.3 | 1238 | 4988 | 495 |
2 | 社台ファーム | ¥6,345,388,000 | 1 | 2 | 10 | 311 | 8.2 | 884 | 3787 | 235 |
3 | 白老ファーム | ¥2,064,370,000 | 2 | 1 | 3 | 99 | 8.6 | 270 | 1155 | 78 |
4 | ダーレー・ジャパン | ¥1,461,34,000 | 2 | 1 | 2 | 71 | 9.5 | 189 | 748 | 58 |
5 | 下河牧場 | ¥1,384,852,000 | 0 | 1 | 1 | 62 | 8.3 | 179 | 749 | 49 |
8 | 追分ファーム | ¥88,757,000 | 0 | 2 | 0 | 33 | 7.8 | 111 | 423 | 26 |
2018年度馬主リーディング
順位 | 馬主 | 獲得賞金 | 重賞勝利数 | 所有頭数 | 勝率 | ||
G1 | G2 | G3 | |||||
1 | サンデーレーシング | ¥3,548,446,000 | 2 | 6 | 4 | 282 | 15.2 |
2 | シルクレーシング | ¥3,089,212,000 | 5 | 0 | 8 | 234 | 14.2 |
3 | キャロットファーム | ¥2,680,778,000 | 3 | 2 | 3 | 258 | 13.1 |
4 | 社台レースホース | ¥2,044,304,000 | 0 | 2 | 4 | 253 | 10.2 |
5 | ゴドルフィン | ¥1,545,987,000 | 2 | 2 | 3 | 217 | 11.5 |
6 | G1レーシング | ¥1,331,514,000 | 2 | 2 | 1 | 133 | 10.2 |
ちなみにシルクレーシングのG1勝ち馬はアーモンドアイとブラストワンピースで、ともにノーザンファームの生産馬です。
社台グループの馬の格付けは騎手で判断
社台グループの生産馬は勝たせたい馬の騎手がある程度決まっています。社台グループの目的ははグループ内で生産した馬が注目度の高いG1や重賞で勝つことです。そのためG1レースに社台グループの馬が多数出走します。
社台グループからすれば基本的にどの生産馬が勝っても損はありません。しかし営業面で考えれば将来種牡馬として高く種付け料を設定でき、国内で広く肌馬を集められる良血馬に勝って欲しいはずです。牝馬であれば、その子供は将来高値で売れます。
勝たせたい馬からリーディング上位の騎手が乗る
勝たせたい馬の1番手グループはルメールやM・デムーロといった外国人騎手を起用します。正直、この二人が非社台系の馬にG1で騎乗することは稀で、出走馬予定馬が回避したり、たまたま有力馬に他の騎手の騎乗が内定していた時など限定的です。
また短期免許で来日している外国人騎手が多く起用されます。JRAで短期免許が許可される外国人騎手は海外で著名なG1を勝つような腕の確かなジョッキーなので、日本人より騎乗技術が上手いと判断しているようです。
2番手グループはに川田や福永など国内のリーディング上位騎手を起用します。それ以外は基本3番手グループ扱いです。武豊は一時期社台との関係悪化で騎乗させてもらえませんでした。最近は関係が修復し、3番手グループで追い出しに腕力が必要ない馬が供与されているようです。
穿った見方ですが、どんなに実績とカリスマ性がある武でも利益優先の社台グループから見れば、2010年の落馬事故で全盛期に比べ力の落ちた今では3番手グループの騎手の一人にしか見ていないということです。それでも2019年に年間111勝している武豊はやはり別格かと・・・。
騎手の乗り替わりに注目
もちろん実際のレースで意図的に出走馬の勝ち負けを左右すればレースの公平性に欠き、競馬法にも違反するので行われません。
しかし社台グループ生産馬で騎手の乗り変わりがあれば、その動きに注目してください。社台グループ系生産馬で格付け上位の騎手のお手馬が2頭以上出走していたら、基本的に自分が勝てると思った馬に騎乗しています。一昔のように馬に騎手の情が絡むことはほぼありません。
そのため社台グループ生産馬以外で有力馬がいない場合は、騎手の動きを見れば馬の能力的な格付けが分かります。また社台グループ生産馬以外の馬で人気馬がいた場合は、社台系の有力馬と実力比較をすれば勝ち負けを判断できます
まとめ
八大競争では社台系の有力馬を狙うのが鉄則です。社台グループは目標は注目度の高いG1レースで優勝馬を輩出し、その馬をスタリオンの種牡馬や肌馬にすることです。
そのため注目度が高いG1やトライアルレースでは、社台グループ関連の有力馬をピックアップすると馬券の的中率が各段に上がります。レースで社台系でない馬が人気だった場合は、出走している社台グループの馬との実力を比較すると馬券の的中率が上がります。
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