中央競馬と地方競馬の違い
中央競馬とは
中央競馬は特殊法人であるJRA(日本中央競馬会、以下JRA)が主催する競馬です。競輪や競艇、オートレースなど公営競技の中で唯一国が全額出資する公営競技で、管轄は農林水産省です。JRAで挙げた収益は全て国庫(国の財産)に一旦納付され、農林畜産業の振興や福祉に役立てられます。
JRAは全国に10会場の競馬場と、関東の美浦と関西の栗東に専用の厩舎を所有しています。
中央開催 | 関東(美浦) | 東京競馬場 |
中山競馬場 | ||
関西(栗東) | 京都競馬場 | |
阪神競馬場 | ||
ローカル開催 | 北海道(夏期のみ) | 札幌競馬場 |
函館競馬場 | ||
関東ローカル | 福島競馬場 | |
新潟競馬場 | ||
関西ローカル | 中京競馬場 | |
小倉競馬場 |
中央競馬のレース
JRAでは平地競走として芝レースとダートレース、および馬がコース内の障害を飛び越えて着順を争う障害レースの3種類が行われます。
地方競馬とは
地方競馬は他の公営競技と同じく都道府県や地方公共団体が出資し、主催する競馬です。収入は都道府県や地方公共団体の利益として計上され、県の畜産業の育成や公共の福祉に使用されます。
地方競馬は17か所ありますが、2021年現在、実際に開催が行われているのは15会場で、北海道、東北、南関東、北陸、東海、近畿、四国、九州の8ブロックに分かれています。
ブロック | 都道府県 | 競馬場名 | 主催団体 | 所轄 |
北海道 | 北海道 | 帯広競馬場 | ばんえい競馬 | 帯広市 |
門別競馬場 | ホッカイドウ競馬 | 北海道 | ||
札幌競馬場 | ||||
東北 | 岩手県 | 盛岡競馬場 | 岩手競馬組合 | 岩手県、盛岡市、奥州市 |
水沢競馬場 | ||||
南関東 | 埼玉県 | 浦和競馬場 | 埼玉県浦和競馬組合 | 埼玉県、さいたま市 |
千葉県 | 船橋競馬場 | 千葉県競馬組合 | 千葉県、船橋市、習志野市 | |
東京都 | 大井競馬場 | 特別区競馬組合(TCK) | 東京都特別区 | |
神奈川県 | 川崎競馬場 | 神奈川県川崎競馬組合 | 神奈川県、川崎市 | |
東海 | 愛知県 | 名古屋競馬場 | 愛知県競馬組合 | 愛知県、名古屋市、豊明市 |
中京競馬場 | ||||
岐阜県 | 笠松競馬場 | 岐阜県地方競馬組合 | 岐阜県、笠松町、岐南町 | |
北陸 | 石川県 | 金沢競馬場 | 石川県競馬事務局 | 石川県、金沢市 |
近畿 | 兵庫県 | 園田競馬場 | 兵庫県競馬組合 | 兵庫県、尼崎市、姫路市 |
姫路競馬場 | ||||
四国 | 高知県 | 高知競馬場 | 高知県競馬組合 | 高知県、高知市 |
九州 | 佐賀県 | 佐賀競馬場 | 佐賀県競馬組合 | 佐賀県、鳥栖市 |
南関東のように4つの競馬場が提携し大規模で行われる地方競馬もありますが、四国や佐賀などは隣接する地方競馬が無く単独開催が主体です。平成20年に各地方地方競馬がより公共の福祉に貢献することを目的に地方競馬全国協会(NRA)が改組され、各地方競馬場及びJRAとの連携を強化しています。
地方競馬のレース
地方競馬では基本的に平地競走のダートレースのみが行われます。盛岡競馬場のみJRAと同じく芝とダートコースが併設されています。また帯広競馬場は日本でというより世界で唯一、馬が重いソリを引いて着順を競うばんえい競馬のみ行われます。
JRAと地方競馬の競走馬の違いは
ばんえい競馬を除き、JRAも地方競馬もレースで走る馬はサラブレッドです。ばんえい競馬では大型馬で荷物の運搬用に改良されたペルシュロン、ブルトン、ペルジャンといった馬が使用されます。
JRAでは芝レースを重視しているため芝馬が大半で、ダート馬は少数派。一方でダートが主体に地方競馬の所属馬はほぼダート馬です。ただし、JRAで未勝利だった馬や能力が頭打ちとなった芝馬が活路を求めて地方競馬に転籍することがあり、必ずしもダート馬が走っているわけではありません。
芝馬とダート馬では適性が異なるため、JRAと地方競馬ではリーディング争いをする種牡馬が違います。馬の能力は血統が影響することが多く、JRAのダート種牡馬のリーディング争いでは見られない種牡馬が地方競馬でリーディング争いしていることも珍しくありません。
JRAと地方競馬のクラス分けの違い
JRAのクラス分け
JRAでは所属馬は新馬・未勝利、1勝クラス、2勝クラス、3勝クラス、オープンクラスの5段階でクラス分けが行われます。オープンクラスに上がれば賞金や条件次第でG1にも挑戦できます。
JRAの重賞は全て国際競走なので重賞レースは「G」で表記され、重要度が高いレースからG1、G2、G3クラスに分けられます。またレースの格付けではオープン特別と重賞の間に準重賞と呼ばれるリステッド競走が設けられていいます。リステッド競走はオープン特別より賞金を高く設定しています。
基本的に3歳秋までに勝利を挙げられなかった馬は未勝利クラスのまま1勝クラスのレースに出走することになります。しかしこ時点で未勝利馬と1勝クラスも馬では実力差がかなりありほぼ勝てません。未勝利馬は①未勝利のまま障害馬になる、②地方競馬に転出、③引退となります。
現在JRAでは降格制度が廃止されたため、各クラスで能力が頭打ちになり賞金が稼げなくなれば地方競馬に転出か引退しか道はありません。
また3勝クラスになれば優勝しなくても8位まで入賞すればそこそこの賞金が稼げるため、そのまま在籍し続けます。そのためこのクラスになると同じクラス内でも上位組と下位組で能力差がかなりあります。
地方競馬のクラス分け
地方競馬でも所属馬はクラス分けが行われています。しかし、基本的に所属する競馬組合のクラス分けなので、地方競馬全体で統一されているわけではありません。
基本的に未勝利、Cクラス、Bクラス、Aクラスの4つのクラス分けが行われます。南関東のようA1、A2のように各クラスをさらに細分化している地方競馬もあります。そのため地方交流競走で同じクラス表記がされても、実力馬が揃う南関東所属の馬と高知競馬では能力にかなり差があります。
地方競馬のクラス分けはレースの着順でポイントが増減し、その累計で昇格、降格が行われます。そのためJRAとは異なり同じクラス内であれば能力に差があまりありません。その分、当日の馬の気配を見る力が必要になり、馬券も絞り難いとと言えます。
また未勝利馬でも着順のポイントを加算し続ければ最低クラスのCクラスに昇格できます。あとは馬主が厩舎へ委託料さえ払い続けられれば現役生活を続けられます。
もちろん地方競馬にも重賞と名の付くグレード競走があり、国際競走は「G」、それ以外の重賞は「Jpn」で表記され、JRAと同様に重要度に伴い1~3のランク付けがされています。
レースの賞金の違い
JRAと地方競馬ではレースの獲得賞金に雲泥の差があります。
JRAの3歳未勝利戦の1着馬の賞金が510万円なのに対し、開催規模の小さな高知競馬や園田競馬場での3歳同クラスの1着賞金は50万円と賞金差は実に10倍。
JRAで最高賞金金額を誇るジャパンカップの1着賞金が3億円に対し、地方競馬の統一G1、JCBクラッシックの1着賞金は8000万円。毎日王冠などJRAのG2の優勝賞金が6700万円なので、いかにJRAの賞金が高いかが分かるでしょう。
もっとも世界最高賞金を誇り優勝賞金が桁違いのドバイを除けば、JRAは香港と並び世界的に賞金が高い主催者です。競馬の本馬ヨーロッパなどでは日本の地方競馬並みの賞金です。
JRAと地方競馬の開催日の違い
JRAも地方競馬も競馬法で開催期間が決まっています。
JRAは基本的に土日開催です。ローカル開催などがあれば、土日と前後する祝日も開催することがありあます。
地方競馬は各運営団体で開催回数が法律で決まっています。1開催6日で、連続する12日間以内で開催日を決めます。また1日に開催できるレース数は12レースまでです。
開催日は各主催者団体が独自に決めているので、15団体の開催日を全て消化すると優に365日を超えるます。そのため地方競馬全体で見れば毎日レースが行われています。
馬券の種類
地方競馬はJRAに比べ馬券の種類が豊富です。
JRAの馬券の種類
JRAで販売している馬券は以下の9種類です。
単勝・・・1着になる馬を馬番(各馬に与えられた番号)で1頭選んで当てる(正式名:単勝式)
複勝…3着までに入る馬((7頭以下なら2着まで)を1頭選んで当てる(複勝式)
枠連…指定枠の番号に入った馬の枠番で1、2着を順不問で当てる(枠番号ニ連勝複式)
馬連…馬番の1、2着を順不問で当てる(普通馬番号に連勝式)
馬単…馬番で1、2着馬を順番通りに当てる(馬番号二連勝単式)
ワイド・・・馬番で2頭選び、2頭が1~3着までに入れば当たり(拡大馬番号に連勝複式)
三連複・・・馬番で3頭選び、3頭全てが1~3着まで入れば当たり(馬番号三連勝複式)
三連単…馬番で1、2、3着馬を順番通りに当てる(馬番号三連勝単式)
Win5…指定された5レース1着馬を全て当てる。(5重賞単式)※インターネット投票のみ
地方競馬の馬券の種類
地方競馬は主題団体により販売する馬券は異なりますが、基本的にJRAで販売している馬券はほぼ販売されています。一方で地方競馬では他にも以下のような馬券が販売されています。
南関東、金沢競馬で実施
枠単・・・定枠の番号に入った馬の枠番で1、2着を順番通りに当てる。(枠番号二連勝単式)
インターネット投票のみですが
JRAのWin5と同じ5重賞単式を実施している地方競馬
ばんえい競馬、岩手、笠松、園田、姫路、佐賀
7重賞単式を実施している地方競馬場は
ばんえい競馬、佐賀
さらに南関東とホッカイドウ競馬では超大型ドリーム馬券を販売
トリプル馬単…指定した3レース全てを馬単で全て当てる(三重勝馬番号二連勝単式)
キャリーオーバーで最大3億円馬券が当たるチャンス!ちなみに一般的な馬券が1票100円なのに対し、トリプル馬単は50円で夢が買えるという大盤振る舞い。ちなにに3レースともフルゲート16頭だったなら、馬券が当たる確率は何と
13,824,000通り・・・
ジャンボ宝くじで一等3億円当てるのとほぼ同じ確率です。雷に打たれて死ぬ確率と同じってヤツです。しかし、ジャンボ宝くじで3億円当てるには最低でも投資金額が300円必要ですが、トリプル馬単は50円からと投資金額はジャンボ宝くじの1/6。ロト6でも200円ですから、これはお得。
ジャンボ宝くじは年間5回ですが、地方競馬ならほぼ毎日が抽選日。しかも宝くじは宝くじ売り場でくじを直接購入しなければなりませんが、地方競馬ならスマホでネット投票できるのでいつでもどこでも好きな時に購入できます。
馬券の購入方法の違い
JRAの馬券は、JRA主催の競馬場およびウインズ・エクセル、J-PLACEといった場外馬券場で購入できます。直接現金で馬券を買わなくてもJRAが提供する電話投票、また即PATやA-PATといったネット投票が可能です。
地方競馬も状況は同じで馬券は各競馬団体が主催する競馬場および提携している場外馬券場で購入可能です。地方競馬もネット投票が可能ですが、JRAとは異なり独自のネット販売システムを持っていません。地方競馬のネット投票は各地方競馬と提携した代行会社が行っています。
現在、地方競馬の馬券のネット販売をしている代行会社はJRAの即PATを含め4つ。
即PAT | SPAT4 | オッズ・パーク | 楽天競馬 | |
運営 | JRA | 東京都競馬(株) | オッズ・パーク(株) | 競馬モール(株) |
購入可能日 | 火・水・木・土・日 | 全日 | 全日 | 全日 |
購入可能レース | ばんえい競馬を除く地方競馬。ただし一部例外あり。 | 地方競馬全レース | 南関東を除く地方競馬全レース | 地方競馬全レース |
JRAの馬券購入 | 〇 | × | × | × |
入会金・年会費 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
ポイントシステム | 無 | 有 | 有 | 有 |
JRAが提供する即PATでは購入できる地方競馬のレースが限られる上、JRAの休業日である月曜は馬券の購入ができません。地方競馬は曜日に関係なくどこかで開催されているので、せっかくのお目当てのレースが買えない危険性があります。
一方、他の3つはそれぞれ一長一短がありますが、馬券の購入額に応じてポイントが付くなど即PATには無いサービスが充実。ポイントは馬券購入以外にも様々なサービスで使えます。もちろん入会金や年会費は一切無料。余計な出費はかかりません。
今、地方競馬が熱い!
競馬のオールドファンなら周知の事実ですが、地方競馬でネット投票が確立するまでは馬券の購入は競馬場まで買いに行かなければなりませんでした。バブル崩壊以降、規模が小さく人口減少に歯止めがかからない地方競馬場では売り上げが激減。
2000年代初頭に北関東3場や荒尾、福山など歴史ある地方競馬場が消滅。開催規模が大きい南関東で累積赤字で賞金や騎手手当の減額が続きました。2004年にハルウララフィーバーに沸いた高知競馬場に至ってはCクラスの優勝賞金が11万円、5着入賞も騎手手当は300円という苦境に立たされました。
しかしネット投票の充実で全国の競馬ファンが自分の好きな地方競馬の馬券を買えるようになり、近年はどの競馬場も売り上げがアップ。現在は地方競馬全体の売り上げが7000億円を突破。
どん底だった高知競馬場の2008年間売り上げ38億円に対し、2019年は564億円まで回復。同年1月30日の1日の売り上げが46億円だったので、どん底だった年の年間売り上げを1日で達成した計算です。これにより地方競馬でも賞金がアップ。関係者のモチベーションも上がっています。
地方競馬の収益は直接地方の財源に充てられ、学校などの公共設備の充実や畜産業の振興など私たちの生活に役立つ事業に振り分けられます。競馬を楽しみながら間接的に社会貢献できるのって、いいですよね!
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